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食材探訪記

2026,09,10

「知ってる食材」の、知らない姿を見に行く

美食ハンターちきちん

INTRODUCTION

今回訪れたのは、大分県佐伯市の蒲江。 きっかけは、留学時代の友人がこの土地で牡蠣の養殖など一次産業に携わっていたことだった。せっかくなら、生産者さんに会って、実際に作られている場所を見て、そこで食べてみたい。そんなところから今回の往訪が決まった。 サーモン、牡蠣、ヒラメ、味噌。 どれもこれまで何度も食べてきたもの。 でも、育っている姿を見て、作っている人の話を聞いて、その土地で食べてみると、思っていた以上に「知らない」がたくさんあった。 今回は、そんな蒲江で出会った“新しい味覚”の記録。

「知ってる食材」の、知らない姿を見に行く

The world is
full of incredible flavor
waiting to be discovered.

|01|かぼすサーモン

「国産のサーモンって、こうやって育ててるんや。」

最初に訪れたのは、かぼすサーモンや、冬に向けてかぼすフグなどのブランド魚を育てている生産者さん。

ここで初めて「陸上養殖」の現場を見た。

魚の養殖と聞けば、海に大きな網を張り、その中で魚が泳いでいる。自分の中ではそんなイメージだった。

でも、実際に目の前にあったのは、陸上の木造建築の建物の中につくられた大きな水槽。その中を、生きたサーモンが泳いでいる。

そもそもスーパーで見るサーモンは切り身になった状態がほとんどで、ノルウェーなど海外産のイメージも強かった。

だから、生きたサーモンが目の前を泳いでいて、それが大分で育てられていること自体が新鮮だった。

「国産のサーモンってあるんや。しかも、ここで育ててるんや。」

そんな素朴な驚き。

実際に食べたのは、少しレアに仕上げたサーモンカツ。

輸入サーモンのような脂の強さとは少し違う。身質はしっかりしているのに味わいは比較的すっきりしていて、噛んでいるとちゃんと甘みと旨みが出てくる。

淡白だからこそ、カツにしても重たくない。

自分の中にあった「サーモン=脂が乗っているほどおいしい」という物差しとは、また違うおいしさだった。

|02|蒲江の真牡蠣

海の味は、海そのものからつくられている。

次は、今回蒲江につないでくれた友人が育てている真牡蠣。

船に乗って実際の養殖場まで出て、海の上で牡蠣が育っている環境を見せてもらった。

蒲江は豊後水道に面し、複雑に入り組んだリアス海岸を持つ土地。外海からの水の動きと、比較的穏やかな入り江という環境が、この土地の水産業を支えている。

普段、牡蠣を食べるときに「この牡蠣がどんな海で育ったか」まで意識することはあまりない。

でも現地に来ると、海の環境があって、その環境を見ながら人が手をかけて、ようやく一粒の牡蠣になることがわかる。

海が育てて、人が仕上げる。

現場を見ると、その味が単なる商品の特徴ではなく、この海と人の仕事から生まれていることが、少しだけ理解できた気がした。



|03|ヒオウギ貝

「こんな貝があるんや」が、そのまま食体験になる。

牡蠣のすぐそばで養殖されていたのが、ヒオウギ貝。

これは本当に、見た瞬間から面白かった。

オレンジ、黄色、紫。

天然のものとは思えないくらい殻がカラフルで、見た目だけなら食材というより、ちょっとした工芸品みたいでもある。

下関出身で、海産物には比較的触れてきたつもりだったけれど、それでも自分はこの貝を知らなかった。

そして、見た目だけではない。

後で焼いて食べてみると、ホタテより少し小ぶりながら、身質はしっかりしている。噛むほどに貝らしい旨みが出てきて、ちゃんと「貝としておいしい」。

珍しいから食べてほしい、だけではない。

見たことのないものを見て、食べたことのないものを食べて、自分の味覚の引き出しが一つ増える。

その体験そのものを、いろんな人に味わってほしいと思った。

何より、カラフルでかわいい。

|04|巡(めぐり)ヒラメ

ヒラメは、厚切りで食べてもこんなにうまい。

そして印象に残ったのが、河内水産の「巡(めぐり)」というヒラメ。

養殖というと、天然物に対してどこか人工的なイメージを持ってしまいがちだけれど、ここでは餌の工夫や養殖環境への配慮など、「おいしい魚をつくること」と「環境への負荷を考えること」がつながっている。

その考え方も含めて興味深かった。

そして何より、食べ方が印象的だった。

ヒラメといえば、寿司や刺身で薄く切って食べるもの。自分もずっとそんなイメージだった。

ところが今回は、あえて厚めに切って表面を炙り、塩と大分のかぼすを少し。

これが本当においしかった。

厚みがあるからこそ、まず弾力と歯ごたえを感じる。そして噛んでいくほど、ヒラメ特有の上品な甘みがじわじわ出てくる。

「白身魚って、こんなに厚切りで食べてうまいんや。」

食材そのものは知っているのに、食べ方が変わるだけで新しい食体験になる。

このヒラメに関しては、むしろ厚切りで食べてほしいと思った。


知っていたのは、名前と味だけだった。

サーモンも、牡蠣も、ヒラメも、これまで何度も食べてきた。

けれど今回、育っている場所を訪れ、生産者さんの話を聞き、その土地で食べてみて気づいた。

自分が知っていたのは、食材の名前と、売り場に並んだあとの姿だけだったのかもしれない。

どんな環境で育ち、どんな人が手をかけ、どんな食べ方で魅力が引き出されるのか。そこまで知ると、いつもの食材にも、まだ見たことのない表情がある。

知らない食材を食べることだけが、新しい味覚との出会いではない。

知っていると思っていたものを、もう一度違う角度から見てみること。その先にも、自分の味覚を広げてくれる発見がある。

蒲江で出会ったのは、初めての食材だけではなく、「知っているつもりだった味」の、その先だった。

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マルサン商店

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東和水産

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(有)河内水産  河内伸浩

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株式会社蒲江創生協会

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